最近、メディアではいろいろと有名人の失言が取りざたされていますが、
交渉事や勝負事の場面においては
失言は当然ながら相手の怒りを買って命取りとなってしまいます。
逆に交渉事を上手に進められると、
対した労力を使わずして物事を思うように進められるので、
仕事のスピードが驚くほど早くなります。
例えば、仕事における無駄な残業の原因は、
社内調整に時間を取られてしまうことも要因として多いですが、
これがスムーズに進めば仕事が早く終わるのは自明の理です。
つまり交渉事を上手に進められれば、
マイペースに、かつ早く仕事ができるのです。
そして戦国時代、驚いたことに
弁舌の才だけで大名になった人物がいました。
毛利氏の外交僧(武家の対外交渉の任を務めた禅僧)を務めていた
「安国寺 恵瓊(あんこくじ えけい)」です。
彼は、羽柴秀吉が備中高松城攻めを行っていた際に
毛利方として羽柴秀吉との交渉窓口でしたが、
その弁舌の才に秀吉が惚れ込み、
後に秀吉の側近として取り立てられ、
僧籍のまま大名となった、
大出世した人物です(批判はあるようですが。)。
その後、中国大返しを行った秀吉が
明智光秀を破って全国統一を進める中、
中国地方の大戦国大名である毛利氏が
秀吉に正式に臣従する際の交渉を務めたり、
秀吉の九州征伐においては先立って大友氏との
和睦締結もまとめました。
彼は毛利氏の家臣だった頃から
いろいろな和睦交渉の場にその名を出していますが、
すごいことにその得意の弁舌で籠城した敵を籠絡して
陥落させたりしています。
秀吉自体が、当時では珍しく、
正面から戦って兵が減ることを嫌うニュータイプの武将だったので、
安国寺 恵瓊のように弁舌だけで敵を籠絡したり、
城を陥落させてしまう人物は
一人で何千何万もの兵と同等の価値があったのです。
ということは、
戦闘による兵力の減少や時間の浪費を最低限に抑えられるので、
彼の活躍は秀吉の全国制覇をスピードアップさせた、
大きな原動力の一つとなりました。
ここで、
孫氏の兵法曰く、
「百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。
戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。」
つまり、
百度戦闘して百度勝利を収めるのは、最善の方策ではない。
戦わずに敵の軍事力を屈服させることこそ、最善の方策なのである。
戦わないことは臆病者(チキン)ではなく、
戦わずして勝つことは、
非常に価値の高い戦略の一つだということが良く解ります。